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「宵!よーいっ」
表戸から元気な女子が入ってくる。
「あぁ…菊水(きくすい)。着物は用意出来たか?」
「今、兄貴がとびきりのを町に買いに出てるよ。なんせ入城だからね!」
菊水は目を輝かせて言った。
「大袈裟だな。所詮、女中としての奉公だ。着飾る事もないだろうに…」
「宵。あんたは解ってない。」
薪をくべながら、菊水は宵をまじまじと眺める。
「宵はそんじょそこらの女子よりずっと別嬪だよ?…下手すりゃ将軍のお目にかかるかもー…」
将軍…
五所河原敦盛(ごしょがわらあつもり)。
憎き兄上の仇(かたき)。
俺は敦盛の城に奉公人として潜入し、敦盛をこの手で討ち取ろうと思っていた。
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