もう一つの姿

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「それにしても宵は素の方が美しいな」 敦盛が男装した宵を見て言う。 「何を仰います。敦盛様こそそんな格好でも高貴な方だと判ります」 敦盛は小汚い格好でいるものの、美男子で何処か風格が漂っていた。 「敦盛で良いと言うのに」 「御恩がありますゆえ」 「全く、難儀な奴じゃ」 敦盛は呆れながらも嬉しそうだった。 「して敦盛様、何処へ向かっているのです?」 「今日は長霜じゃな」 「長霜(ながしも)?」 「長霜は四方を山に囲まれた豊かな農村じゃ。米が良く取れる。」 しばらく山道を進むと目の前に広大な水田が広がった。
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