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「戻ったぞー!」
「兄貴!遅いじゃないかっ」
菊水の兄、泉水(いずみ)が着物を抱えて入ってきた。
「泉水、済まなかったな」
「何を言ってる。お前の野望は俺達の希望でもあるんだぞ」
泉水と菊水は、元は宵の兄、兼松(かねまつ)が治める戸張家に仕えていた。
敦盛の襲撃の際、兄と共に倒れている宵を泉水が救い出したのだ。
そして妹の菊水と3人で逃亡し、小さな集落に身を潜めていた。
「あれから3年か…」
宵は哀しみに満ちた瞳で、庭の柿の木を見た。
「さぁ宵。俺の見立てた着物に袖を通してくれ」
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