入城

4/4
前へ
/116ページ
次へ
「「はぁー……」」 宵の着物姿に二人は感嘆の声を漏らす。 「どうだ?怪しまれるか?」 怪しまれるどころか、こんなに美しい女がこの世に他に居るだろうか。 整った顔立ち、長い睫毛、細い首筋に透き通るような白い肌。 淡く微笑む笑顔は全ての者を魅了した。 宵を造る全てが、男とは思えなかった。 「宵は…美しいよ。」 泉水が帯を整え、そう言う。 「…姫だね!宵姫さまだよ!」 菊水は嬉しそうに言う。 「言い過ぎだよ、菊水。…泉水、城まで付いてくれるか?」 「あぁ、勿論だとも」 「宵!必ずあたしも行くからね!!」 「有難う。…では参る。」 泉水の呼んだ籠車に乗り込み村を出る宵を、菊水は涙を浮かべて見送った。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1307人が本棚に入れています
本棚に追加