日輪は蒼く輝く

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 ふっ、と子どもの目蓋が揺れる。  目を覚まそうとしているのだろう。  子どもはゆるゆると目蓋を開け、その澄んだ瞳で利広を見つけた。──無邪気な笑みをその幼顔に浮かべ、利広を見つめる。  その瞳は黎(くろ)く、どこまでも、何もかも、吸い込んでゆきそうなほどに透き徹り、あたかも利広の中の何もかもをも見透しているようで、──深く。  しばらく見つめ合っていると、ふとした思いが頭をすぎる。  この子はこのまま見つけたときのようにここに置いておくと、きっと妖魔に食われるだろう。  しかも今はこの国には王が居ないのだから。  そしてこの国は、この先さらに深い荒廃と言う名の闇に覆われていくのだから。  その中で私に出逢う、とゆうことは、天がこの子を私に任された、とゆうことなのだろうか。──この永久(とこしえ)に続くかのような生のなかでたった一度の巡り合わせ。  それは天の配剤。否、運命と言うのだろう。──ならば──。  利広は赤児を抱いたまま、趨虞にまたがる。  その獣は天(そら)たかく翔び上がった。  ふと思う。名前がない。 きっと名前はあるのだろうがそれを知る術がない。 蒼みがかった黒い髪。 そのかみに合わせたかのような深い蒼の瞳。 「蒼黎、にしよう」  それが彼にとって『誕生』だった。
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