14人が本棚に入れています
本棚に追加
「ミク…レチア?」
僕が呆然と目を丸くし、ミクレチアを眺める。
「カイザレお兄様」
ミクレチアが僕の名を呼ぶ。
綺麗な声色で、ただ僕の名前を。
「い…きて…」
僕が言葉をつむごうとすると、ミクレチアはそっと僕の唇にその綺麗な指を押し当てた。
「知っていたんです」
カイザレお兄様が、ワインにカンタレラを入れていたことを。
知っていたから、ワインをすり替えて、私が死んでしまったカイザレお兄様がどうなさるか試したのです。
「私も、カイザレお兄様と同じ気持ちでしたから」
この狂わしい想いを私も抱えきれなくなっていたから
「私はカイザレお兄様に捕まえてもらいたかったから」
そういってミクレチアは僕の唇に自分のそれを重ねた。
ゆっくりと唇が離されるとお互いに吐息が洩れ、熱に浮かされた顔色でお互いを見つめ合う。
最初のコメントを投稿しよう!