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そして翌日へ移行する―――
「おーい、マルコ。そろそろ昼休m……白っ!どうした?罰ゲームの粉でもかぶったのか?」
「ああ、燃え尽きたよ真っ白にな…」
クラスはいつもの平常を保っている。オレの朧気な視線の先にはいつもと変わらぬ笑顔を振りまく黒野さんがいた。その笑顔を見る度、オレの心は傷口に指を入れられるような痛みに襲われる。痛みに侵され自分の思考さえもよくわからなくなって、っていうかコイツ誰みたいな、結構いい男みたいな、胸板厚いみたいな、オレはノンケでも食っちまうんだぜ?アッーみたいな。
「オレ実はお前の胸板にステーキ乗せて食べたいと思ってるんだ」
「死ねよキモイ」
「そう堅い事言うなって、ほら」
「おい…!ケツ触んなよ」
「お前のケツ柔らかいなぁ、柔軟剤でも使ってるのか」
「ひ…ひぃっ!!」
一人の生徒は表情を真っ青にして逃げていった。残念だ…せっかくお友達になれると思ったのに……。
ああ、瞼が重い。そういえば昨日からろくに寝れていないな……。
―――――
大切な物はいつも指の隙間をすり抜けて…すくってもすり抜けて手の平には虚しさだけが残る。でもそれを認めたくなくて何度もすくう。いつしか使えなくなった手は緋色に染まり砕け散る。無くしてしまった大切な物も、自らの手も元には戻らない。地面に染まる緋色は言う、『その体には乾いた血と骨しかなくなった』と。ただ暖かさを求めた。それがどんなに無様で惨めでもすがりつくように。だが既にすがる物すらなかった。
―――――
「おーいマルコ、いつまで寝てんだ。早く起きねぇ…やっべ来た…」
隣の席の生徒に体を揺すられ、微睡んだ意識から解放される。だがそれと同時に先程までヨダレを垂らしていた机の上ににどす黒い影が差し込んだ。徐に顔を上げてみると何やらだいちゃんが片足に体重を乗せ、姿勢を低くして腰を捻ってオレとは反対方向を向いていて…それはどこか振りかぶっているようにも見える。
何あれ、新しいジョジョ立ち?
「死ねぅうええやあああああああ!!!!」
――バキャアアン!!
「うわあああ!」
振り下ろされた拳が耳の横をかすめ、机に叩き落とされてそこから煙を出している。そしてだいちゃんは笑顔で言った。
「マルちゃんってばあんまり寝てるとお仕置きしちゃうぞ(殺すぞ)♪」
とんでもなく教師らしからぬ副音声が聞こえるんだが。
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