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その後もオレは机の上で突っ伏したままだった。周りの生徒達はヒヤヒヤしていただろう。その行動が何を意味するかは理解していた。理解していたからこそ望んだんだ。だいちゃんに怒られるという激しい感情によって自分の悲しみに満ちた感情を洗い流そう、そう思っていたんだけどな。だいちゃんは何も言わずに授業を進めた。生徒達は不信に思っただろう。
そりゃそうだろ。だいちゃんは先生である前に人なんだから…オレと同じ感情だったのだろう。
結局、最後まで自分を閉ざし、充実した時間から逃げた。そして文字通り最後のホームルームでだいちゃんは静かで落ち着いた声でゆっくりと口にした。
「みんなも気づいてるとは思うけど残念なお知らせがあります」
や…やめっ…。うわああああああ!
「柔道部の鮫島君が…」
なんだ鮫島か、続けたまえ。
「先ほど交通事故にあって入院中だそうです」
気づかなかった…。よく見れば教室の中心で一つ空いている席がある。次第に教室内がざわざわとしだした。だからいいんだよ鮫島の話は。てかおかしくね?なんでホームルーム前の休み時間中で事故するのアイツ?オレも小学生の時、事故とか骨折に憧れた事あったけどなんでお前下校まで待てないの?空気読めよ、今黒野さんの大切なラストシーンだったんだよ。それをお前………どうせ道路に飛び出した柔道着をかばってダンプにひかれたんだろ。
いや、待てよ…鮫島は…。
「それともう一つ…もう一つだけ…」
ちょっと待っ…心の準備がああああああああああ!!!
「今日を最後に円川君がブラジルに転校します」
なん……だと?
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