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「じゃ~今日のホームルームは終わり~。みなさんさようなら~」
クラスの全員は何事もなかったかのように席を立ち、部活に行く者や我が家に帰る者、各々が目指す場所へと向かって行った。
ちょ、あれブラジル…?何が?色々とおかしいけどお前ら酷くね?オレ、目から塩水出てね?てかブラジルって日本の裏側じゃね?ブラジルってサッカー人気じゃね?サッカーってオレ好きじゃね?サッカーボール蹴っといて友達とかなくね?パスポートとか国籍とか大変じゃね?あれ?オレ、ブラジル行く気になってね?
頭の中でぐるぐると色々な物をかき混ぜて何がどうやってどの方向に…いや、もう自分でも何言ってるかさっぱり分からん。それに誰かがさっきから後ろでブツブツと何かを呟いている。
「おかしいなぁ…。どこで方程式が入れ変わったんだろ……?どこかの時間軸に異物が入っちゃったのかなぁ…?難しい式に組むんじゃなかったなぁ……」
「黒野さん…?」
一瞬、漂ったいい香りがオレを冷静にさせた。全く意味の分からない内容の言葉をブツブツと呟いていたのは黒野さんだった。黒野さんはハッと我に帰ったかのような顔をすると片手をひらひらさせて話しかけてくる。
「やあーマルコ君転校しちゃうの私寂しいなー(棒読み)」
「………」
死のう…。
「わあ!マルコ君早まっちゃダメだよ!」
夕日を見据えて窓に足をかけるが黒野さんに必死に止められる。
「黒野さん…みんな冷たいし、なんか今日おかしくね?」
「気のせいだよ…」
「それに鮫島さぁ…あいつ実はホームルームが面倒で始まる2分前くらいにバックレたんだよね。2分間で人って事故るのか?それに学校に通報が来るのなんてもっと後のはずじゃ…」
「気のせいだよ…」
「あとさ、ポマードの野郎昨日の放課後に足骨折したはずなのに今日スキップしてたんだよ」
「気のせいだよ…」
「てかオレが転校とかおかしくね?オレ自身そんなの知らねーもん」
「気のせいだよ…」
「だいたい転校するのはオレじゃなくて…」
「じゃあ、誰?」
そこでオレは心臓を掴み取られたような緊張感に襲われる。そこにはオレの知らない別の黒野さんの表情があった。張り詰めた空気、まるで空間自体に亀裂が入りそうな程に。それはジリジリとオレに詰め寄ってくる。
そして黒野さんは小さく言葉を紡いだ。
「君だったんだね『異物』は」
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