終わりと始まり

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「もう追いかけっこは終わり?」 天井だけが見えていた視界の中にそれは入ってきてオレにそう言った。あともう少し、もうちょっとでいいアングルなのに。見せてあげてもいいけどやっぱり オ ア ズ ケ …ほう、この女なかなか分かってやがる。こんな危機的状況でもそんな思考が広がる。死ぬ時もオレにゃ走馬灯なんて見えんのかもね。 「へぇ…黒野さんって錬成陣なしでも錬金術使えるんだ…」 「大丈夫、君は変換したりしないから。そのままの姿で壊してあげる」 「ふんっ、焦んなよ…。ほらガムあげるから。制服着てたら股関の辺で2週間くらい右往左往してたヤツだけど」 「……」 ――バキャアア! 「うわああああ!」 黒野さんの右足はオレの顔があった場所を踏み砕き、ガラスの屑とタイルが飛び散る。なんてこった!こいつオレの等価交換を無視している!? 「すいませんでしたー!本当はあのガム溶けてましたー!もう銀紙かガムか分かんないくらい溶けてましたー!な!?オレ謝るから!ほら今でもオレがんばってるよ!?こんなオレ親しい友達には見せらんないよ!?オレ謝ってんじゃん!?ここまでしてんのに逆におかしいと思わない!?許してくれたっていいじゃん!さてはアレだな!本当は許してもいいけどなんか煮え切らないとかいうヤツだろ!ほら200円あげるから! あ、ごめん80円しかないわ」 ――ブオオオン! 「ぬあああああ!」 チクショウ!さっき昼休みに自販機でアクエリ買っちまったああ!なんでオレはアクエリなんて買っちまったんだ!今日は気分を変えてファンタでいくつもりだったのに! オレは体に鞭を打って立とうとする。それが追いついてこないように無様に足を絡ませながらも体をできるだけ遠くへ逃がす為に。しかし、同時に右足に鋭い痛みが走った。 「ぐああ!!」 透明のナイフがオレの右足を掠めた。あまりの事に動揺して壁を目の前に振り返ると真っ直ぐな軌道で飛んでくる無数のナイフ。避けきれるはずもなく―― 体の線に沿って飛んできたナイフはオレを壁に貼り付けにした。そう、まるでいつもの様に。
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