終わりと始まり

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男はローブの影から見え隠れする顔に手を当てて歯をギリギリと噛み締めながら口にした。 「この火傷の傷はなぁ、てめぇの親父にやられたんだよ。一瞬だ……すれ違い様の一瞬で丸焼けにされちまったんだァ!ハハッ!」 男は極度の興奮状態に陥り、視点が落ち着かず、まるでどこを見ているのか分からない。不自然な呼吸を整える事なくその口からは憎しみが吐き出される。 「忘れもしないぜェ…あの時の苦しみを……ハッ!まるで恋でもしちまったんじゃねぇかってよ…復讐の時を待ち焦がれたのによォ!いざって時に死んじまってんだもんなぁ!」 「!!!!!」 「傑作だろ?笑っちまったよ。すぐくたばっちまう様な野郎にこんなんされたんだぜ?」 「……だまれ…」 「あぁん?」 「だまれっつってんだろーが、このズルムケヤローが…ッハぁ!」 後頭部に鈍痛が走る。男はオレの顔を鷲掴みにして後方の壁に打ちつけたのだ。予想外に男の腕力が強く、痛みよりも意識の方がもっていかれそうになった。 「だからよぉ!ハッ!あのクソッタレのガキをぶっ殺してこの痛みを伝えてやりゃストレス解消だろ!?」 その後も男は時折、意味の分からない言葉や奇声を発しながらオレの後頭部を壁に叩きつけ続けた。意識が朦朧としてきて次第に髪の毛の隙間から温かい物が頬を伝わってくる。終わった頃には後頭部に位置する壁は赤色が散りばめ彼岸花が咲いたかの様だった。 意識など殆ど消えてしまう手前の所であった。後はもうそのまま消えていくのだと思っていた。だが男はしてはならぬ事をしてしまったのだ。 「どうせなら最後はてめぇの親父に殺されんのがいいだろ?」 男が自身の顔に手を触れる…すると目の前には父親の姿をする者が立っていた。 「ほ~らパパでちゅよ~」 「や……め……」 「パパと一緒に!死んでくれやぁ!」 「――――――」 その時自分の中でプツンと糸のようなものが切れ、巨大な何かの影に触れた所でオレの意識はシャットアウトした。
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