終わりと始まり

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「いつもマルコばっかりサボりやがって!」 「お前ら…!やめっ!アッー!アッー!」 「変な声出すんじゃねぇ!」 ――ゴシャア! 「もぺしっ!」 柔道部の鮫島君(だったと思う)のナックルがオレの額を割り、普段出ないような声が発せられ枯れ葉のようにひらりと倒れていった。そして意識はまた混沌へと導かれていく。 「む…」 小一時間経ったのだろうか。景色の向こう側では朱に染まった太陽が山へ降りようとしている。目覚めると同時にズキズキとする痛みを覚えた額が痛む。 「痛ぇ、鮫島の野郎。この痛さ、本当に 割れてんじゃね?」 確認しようと額に手をやろうとしたが体がピクリとも動かない。何かがおかしいと恐る恐る自分の体を見渡すと… 「何ぞこれぇええ!」 今、まさに起動しようとした自分の体は教室の最後方の掲示板に画鋲で服の上から張り付けにされていた。まるで処刑でもされるかのような十字架の形で体は固定されている。その固定力は隙間なく埋め尽くされた画鋲の群により完璧といったまでに。 「どんな形で罪を償えって言ってんだコルァ…っ!」 誰もいない教室でジタバタと悪あがきをしている最中、どこからか視線を感じるのである。唯一、自由のきく顔を横にくるりと回して違和感の先に視線を投げるとなんともビューティーフォーなおにゃの子が机の上で両手で頬杖をついてこっちを見つめていた。 「く…黒野さん」 「おはよ、マルコ君♪」 彼女は夕日が差し込む光に反射して綺麗に輝く瞳で見つめたまま、いたずらっぽく笑ってみせた。猫を思わせるような上目使いが愛らしい彼女の名前は『黒野梨花‐クロノリカ‐』、細身の体に制服を纏い、肩の所で切りそろえた黒髪がさらさらと風になびいている。いつもオレに気にかけてくれて(気のせい)優しく、オレに初めて恋という淡いチェリー色の感情を覚えさせてくれた女の子。 「じーっ」 そんな彼女にこの醜態を晒すというのはある意味処刑なのだろう。あうあう。黒野さんの輝く瞳から繰り出される視線が痛い。いや、逆に考えろ。もしかして黒野さんはオレに気があるんじゃないのか?(気のせい)そして未だオレの姿を視姦し続けて(見つめて)いる瞳に言葉を投げかけた。 「黒野さん…そろそろ助けて」 「ん~っ、もうちょっと♪」 どう見ても確信犯です。ありがとうございました。
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