3/3
前へ
/83ページ
次へ
「これはまた、業物ねぇ」 道具屋の主人のように、触っただけで分かる訳ではないが、その刀の放つ空気が確かにその格を分からせている。 黒金の鞘には僅かな飾り彫り、朱色の糸を編み上げた柄尻には赤い水晶の飾り玉が二つ。 触れれば切れんばかりの美しさを、納刀状態でも理解させる。 「藍さまー、きれーですよ……」 「ああ。きっと儀礼用なんだろう。」 二人の式神が見とれる中、紫は鯉口に指をかけ、その刀身を抜きはなった。 金属がこすれるというよりも、鈴を鳴らしたかのような音が鳴る。 「あ痛!」 続いて何かが落ちる音と、三人以外の声。 刀の美しさに丸くなった三人の目が、驚きに丸くなる番だった。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加