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「……待たせた。ん?これは、妹紅か」
「……ほう」
「へぇ♪」
二人がにやにや笑うのにも気づかず、慧音は竹籠を奥の部屋にしまいに行く。
「ちゃんと友人のようですね」
「だねっ」
笑い合う二人の元に戻ってきた慧音は、まず赤に太刀を返すと、二人の前に正座した。
「とりあえず、一つ分かったことがある。……いや、一つしかわからなかったというべきか。」
太刀の結い紐を調整する赤に、慧音は静かにはっきりと告げた。
「私に分ったことは、何も分からない事が分かった」
「……は?」
真剣な顔でとんちめいた事をいう慧音に、間抜けな声が漏れた。
「まぁ、最後まで聞け。この刀に関しては幻想郷の歴史には存在を記されていない。それどころか、結界で隔離される前の歴史にも、だ。」
つまるところ、史家である者にはこの刀の正体を解明することはできない、と慧音は言った。
「だが、刀に関してなら私より詳しいものがいる。今その者に紹介状を書いてやるから、ちょっと待っていてくれ」
慧音は取り出した小ぶりな巻物に、流れるように文書を書き連ねていく。
巻物の表に書かれた宛先は、「白玉楼 御庭番 魂魄妖夢殿」と記された。
「一応、人里の上白沢からと言えば無下にはされるまい。役に立てずすまないな。」
そう言って深く頭を下げる慧音を、二人はあわてて止める。
「いえ、紹介状だけでもありがたく思います。」
「まぁ、赤に幻想郷の案内できるし、全然大丈夫!」
それで、その白玉楼へは…と赤が言いかけた時、二人の目の前の空間が突如として裂けた。
「はぁい、頑張ってるかしら?」
こういう心臓に悪い登場を、面白いからの一点張りでやめない人物……それはその場の三人すべての脳内に一人しか該当者はいない。
「「……紫様」」
「今さらだが、白玉楼への行き方はそこの妖怪に聞いたほうが早いぞ?多分」
部屋に居合わせた三人全員が呆れ顔をするのはなかなか珍しい光景ではないだろうか?
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