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「……橙さん、下がって」
叩きつけられる剣気に、赤も刀を抜く。
「……抜くか」
「ええ」
橙が二人の間合いから外れたのを確認して、赤は左下段に太刀を構える。
低く構えたそれは猫科の肉食獣のように。
その爪牙で喉笛を狙う。
「我ら倭刀使いは戦わぬ者を斬る無粋はしない」
斬っていいのは斬る覚悟と斬られる覚悟をした奴だけだ、と少女も二刀を構える。
「では……」
「……参る」
少女が促したのを確認して、赤が駆ける。
地面すれすれを燕のように駆け上がると、赤が刀を一閃する。
「……地の利、得物の長さと数、これだけの優勢を揃えてかわせないなら」
首をわずかに退いた後、少女は右の刀を閃かせる。
「剣士は、名乗れない」
ひらりととんぼをきる赤に、少女は宣言した。
「……なるほど」
赤も上段、顔の右に刀を構え直す。
「ならば全力を以て貴女を打倒しましょう」
「私も全身全霊を以て貴女を阻みます」
二人の放つ剣気がぶつかり合い、空気の張りが一段強くなる。
「「………お覚悟を」」
二人がつぶやき、ぶつかり合った。
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