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数回の衝突をへて、互いに退かない二人。
実力の均衡を崩すには、どちらの剣も速く、鋭かった。
「……やりますね」
「そちらこそ」
軽く口の端を持ち上げ、少女が一刀を納めた。
「剣だけで決着をつけたい剣士は久しいのですが、仕方ないですね」
左の手を懐につっこむと、一枚の符を取り出した。
「これで終わりにしましょう……人符、現世斬」
符が光ったかと思うと、少女は先ほどより更に速い踏み込みを見せる。
高速で接近する殺気を感覚で捉え、反射で弾く。
「ならばっ」
赤の背後で方向転換した少女は、もう一刀も抜き放ち、再び駆ける。
赤の目にそれは映らない。だが、刀身からノイズ混じりに何かが見えた。
そして、気がついた時には
「……何!?」
少女の交差した二刀にその太刀を振り下ろしていた。
「まさか、現世斬が見切られるなど……」
間合いを置いた少女に、赤は率直に言った。
「見えてなどいません。ただ、反射的に振り下ろしたら止まった……それだけです」
少女はきょとんと目を丸くした後、嘆きも怒りもせず、笑った。
「なんだそれは!そんな理由で、あのタイミングの一太刀を選択したのか?!」
「確信はありました……記憶がないせいで、どうしてかは分かりませんが。」
そう言って構える赤に、少女は再び紙符を突きつける。
「……次も同じと思うな」
「心得ました」
少女は高らかに宣言する。
己の存在、想い、技を。
「人鬼、未来永劫斬!」
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