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宣言直後に赤を襲った剣閃は重く、速かった。 閃光のような一撃に弾き飛ばされた赤が次に目にしたそれは 「……なっ」 二刀による剣撃の弾幕。 速く、鋭く襲い来るそれは、弾幕以外の形容を許さない。 「にがさん!」 弾幕に押されてかわして下がるも、石段の上は狭い。 致命傷だけを流し、そらして行くも、このままではジリ貧だ。 ……………! その時、赤の脳裏にノイズが走った。 かつて刀であった赤を手に取り、戦う男。 彼は最小の動きで、自分に当たる攻撃を見切り、撃ち落とし、かわす。 剣の嵐も、銃弾の雨も、降り注ぐ攻撃は殺意を読まれ、彼を傷つけることはかなわない。 ノイズがかったその声で、彼ははっきりとそう言った。 「奥義、剣撃結界」 無意識に攻撃を反らしていた赤の意識が戻る。 どれだけの間追憶の中にいたのかは知らない。 ただ、懐にしまったそれに違和感があることだけを強く感じた。 「征ッ」 強く振り抜いた一撃は、赤と少女を弾き飛ばし、強制的に間合いを広げた。 「……これが、スペルカード」 赤の手に握られていたのは、少女が使ったものとよく似た紙符。 ただ、それは先ほどまで白紙だったのだ。 だが、今はあぶり出したかのように絵柄が浮き出、炎に焦がれるように文字が浮かび上がる。 感覚が理解していた。 後は呼べばいいのだと。 「……奥義、剣撃結界」 厳かに その誕生を宣言した瞬間だった。
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