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紫が返した刀を受け取ると、少女はそれを抱きしめ、背に括った。 刃金が加わった事により、本来あるべき戦巫女の姿が完成した。 「まぁ、そこまでしっくりくるなら嘘は無さそうね。」 渋るようなそぶりを見せた紫もここまで似合ってしまっては認めざるをえない。 「それで、すみませんがここが何処なのか教えてはいただけませんか?私、社以外の場所にでるのは久しぶりで……」 「ここは幻想郷よ。私はそこに住む妖かし、八雲紫。ここは貴女の居た顕界とは結界で切り離された別世界……とでも言えばいいかしら。」 後ろ頭を掻く剣精に、紫はめんどくさ気ながらも説明をしていく。 「元居た場所に戻すにしろ戻さないにしろ、ちょっと時間がいるわ。その間、貴女を維持するために私の式として契約してあげるから……まぁ、観光でもしてきたらどうかしら?残るなら本契約すればいいわけだし、ね。」 そういうと、紫は少女の額に小さな札をかざした。 数瞬でそれを懐に仕舞うと、紫は空間を裂き、スキマを作り出した。 「そうそう。貴女名前は?」 スキマに半身を突っ込みながら、今思い出したと言わんばかりに紫が問う。 「銘は無いんですが、何か不都合でも?」 刀の少女はきょとんとして答えた。 「不都合大有り。……そうね、ここにいる間は私の式として八雲の名を名乗って良いわ。貴女は全体的に赤いから赤(あかり)にしましょう。八雲赤。」 そういうと、紫はスキマに消えていった。 「……私も所用で空ける。橙、式神の先輩として赤さんに幻想郷を案内してあげるんだぞ?ついでに博麗神社にお使いも、だ。」 「……せんぱい……はい!私、先輩ですから頑張りますっ!」 藍は橙に手紙を渡し、頼んだぞ?と言い残し、紫と同じスキマに飛び込んでいった。 「では、お願いしますね。橙さん。」 「橙さん……!はい!どーんとまかせてください!…………ゲホッゲホッ!」 胸を強く叩きすぎて咽せる橙と、その背中をさすりながら歩く赤とで凸凹な旅が始まった。
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