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寂れた石段の先にあるは博麗大社。
幻想郷一妖怪が集まる神社である。
「あー……また紫がね?見慣れないのと見慣れたのが来た時点で予想はついたけど。」
こめかみに指を当て、呟いたこの人こそ化物神じ……博麗大社の巫女、博麗霊夢である。
金欠巫女としては有名で、副業の妖怪退治ばかり名が売れている。
「こ、今回はちゃんと報酬も用意するって紫さまが!」
「あー…魅力的だけどパス。立て込んでるのよ、仕事が。」
手紙を渡された霊夢は渋い顔を崩さない。
「珍しい……じゃなくて大変なの?」
「大変というほど強くないけど、大変というくらい数が多い、かしら。」
霊夢の表情は、目をつむり、眉根をよせて口は真一文字。
擬音で言うなら「うーん」としかいえない。
「悪鬼。それも下等なやつなんだよなー」
神社の奥から出てきた少女は千鳥足で、酒臭かった。
両手に鎖、その先にはカラフルな飾りがついている。
なにより目を引くのは頭の角。
「よぅ霊夢。また出番か~」
「………鬼っ」
今まで大人しくしていた赤が一気に殺気立つ。
「あいや。私とは相性悪いのが居るみたいだねぇ。まぁ一献どうだい、お姉ちゃん」
「ふざけるな!」
赤の殺気が解き放たれようとしたその時
「はいストップ。赤とか言ったっけ?これは飲んだくれだけど悪い鬼じゃないから。アンタも誰彼かまわずお酒勧めない。」
「……はい」
「わかってるよ~。飲みたくないなら言えばいいのにさ~」
ぶちぶち言いながら小鬼は去っていく。
「あ、赤さん、一体どうしたんですか?らしくないです、怖いです……」
「すみません、橙さん。」
頭を振って落ち着けた赤は、目線を伏せた。
「相性悪いの、とか言ってたわね。アンタの剣はもしかしなくとも」
「お察しの通り、鬼斬りの霊刀です。」
赤は苦笑じみた笑みを浮かべてそう言った。
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