家族

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専業主婦になってからは、収入の不安もあったのだろうが、それ以上に私が家にいることで、旦那は少し安定した。 但し、実家に帰ったり、友だちが遊びにきて家事がおろそかになると怒鳴られたけどね。 なんたって、私が少しでも楽しいのが嫌な人なんですから。 大好きな歌も歌わなくなったのは、夕飯の支度をしながら鼻歌を歌っていたら、 『うるせー!馬鹿みたいだから歌うなっ!』 って怒鳴られたから。 そうそう! テレビ見ながら話をしてる時。 聞かれた事に答えていたら 『お前がウルサくて、今(テレビで)なんて言ったか聞こえなかっただろっ!』 と、箸を投げられたこともあったな。 きっと私の存在を母親に置き換えてたのだと思う。 そんなある日。 陣痛がきた! 夜中に軽く陣痛がきたのだけれど、15分間隔になったら産院にくるよう言われてたから、不安を抱えて朝までひとりで頑張った。 旦那は別の部屋で寝ていたから、一時間間隔なんかで起こしたら、きっと文句を言われる。 朝になって40分間隔だけど、不安な私は旦那に病院まで送ってもらうことにした。 さすがにこの時は、心配そうな顔してたな。 そんな風に、暴力の中に少しの優しさがあると許してしまう。 これは典型的なDV被害者の心理だと知ったのは、数年後だったけどね。 20時間の陣痛を経て、無事に長男を出産。 旦那は、育児雑誌で紹介されていたような、ねぎらいの言葉なんて勿論かけてくれなかったけど、さすがに嬉しそうだった。 赤ちゃんをどう扱っていいか分からない様子だったけど、とにかく可愛くて仕方ないって感じだった。 結婚して初めて、幸せを感じた瞬間だったよ。 勇気くん。 生まれてきてくれてありがとう。 ただ、 旦那は親の愛情を知らずに育ってきたので、父親という存在の手本が昔気質のおじいちゃんだった。 亭主関白だったおじいちゃん。 やっぱりお婆ちゃんも苦労してたな。 そっか。 そういうことなんだ。 無事に親子で退院。 勿論、里帰り出産なんてできませんから、旦那の待つ家へ帰宅。 初めて家族になった感じの夜だった。
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