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私はキャベツの千切りや肉の脂を頭から垂らしながら、旦那に向かって初めて怒鳴った。
『なにすんだよ』
思ったより低い声が出た。
私の中の本当の私の声だったのかも知れない。
まだゲップをさせてなかったけれど、勇気を静かにベッドに戻し、旦那の前に立った。
意外な展開に、ちょっと驚いた顔の旦那。
しかし、すかさず『なんだと?この野郎っ!』
そう言って殴りかかってきた。
私は素早くよけて、旦那を勇気から遠ざけるように押していった。
あの子を巻き込むことは出来ない。
途中、何度も蹴られ、殴られそうになったけど、私だってバカじゃない。
今までのあんたの殴り方を体が覚えてるんだよ!
どう来るか分かるから、何度か旦那は空振りした。
それが気に入らなかったのか、洗面所の床に押し倒されて喉を掴まれた。
倒れながら後頭部を床に強くぶつけた。
苦しい‥
息ができない‥
喉が潰される‥
キーーーーン‥
いつもの耳鳴りがして頭が真っ白になった。
抵抗するはずの私の手や足は、旦那の体で押さえつけられて動かない。
もうダメか‥
いよいよ死ぬのかな‥
そういえば、今まで死にたいって考えたことなかったな。
勇気がいたから‥
勇気を守れるのは私だけだから‥
でも、もうダメかも‥
私が死んだら勇気はどうなるんだろう‥
妻殺しの息子として生きていくのかな‥
それは可哀想だ‥
…うぁぁ…痛みが麻痺してきた…
…意識が飛びそう‥
頭に血が溜まってく感じがする‥
私が意識なくなる時って、死ぬ時だったのか‥
何故か遠のく意識の中で、そんなことを考えていた。
しかし危険を察したのか、旦那が手を離し、横たわる私を蹴り飛ばして、向こうへ行った。
私は急いで体を起こし、咳込みながら体のおかずを払い、勇気のゲップをさせに行った。
体中痛かったけど、なんだか旦那に勝った気分になっていた。
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