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漆黒の闇を一隻の輸送艦が進んでいる。
無機質な灰色で、ゴツゴツとした艦影。
見たところ、その物々しい形相から民間船舶ではないことが伺えた。
この艦は地球統合宇宙軍所属の輸送艦である。
当然、軍艦であるから艦内は軍人たちでひしめき合っていた。
艦内もお世辞にも綺麗とは言えなかった。
その上、陸軍の下士官たちであろうか。
下品な笑い声を発てて、大騒ぎしている始末である。
そんな中で、一人だけ異色の存在感を放つ青年将校がいた。
周りが皆、陸軍兵士だが彼だけは違った。
昔からの宇宙軍の伝統である白を基調とした制服に身を包んでいる。
彼は宇宙軍の若き将校だ。
そんな彼は艦内の一番後ろにある座席に座り、制帽を目元まで下ろし静かにしている。
…ったく、これだから陸軍の連中は…
彼は舌打ちをしながら、軽い瞼を必死に閉じ、外界の雑音に堪えていた。
その時、一人の陸軍下士官が艦内後部にいる宇宙軍将校に気づいた。
「おんや~? あんなとこに宇宙軍将校がいるぜ?」
彼らは飲酒をしていたのか、ひどく泥酔しているようだ。
他の者たちも、それを聞いて後ろを振り向く。
「ほんとだなぁ~ だがよ、なんでエリートのはずの宇宙軍将校様がこのような小汚い輸送艦にいらっしゃるのでしょうか~?」
このご時世、宇宙軍将校になるには難関である宇宙兵学校に入学しなければいけなかった。
そしてその中でも一握り成績優秀の者だけが、卒業することができた。
そんな所を出ているのだから、世の中の宇宙軍将校への印象はエリートか金持ちとされていた。
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