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そしてそんなことには全く頓着していないゼルドは、さっさと前を歩いていた。
ディグレイはヒクリと一瞬だけ顔を引きつらせてから、その後を追って走る。
「ちょ……待てよっ!
はえーんだってのっ!!」
ディグレイはそのまま歩き続けるゼルドにようやく追い付いて、息を切らせながらその肩を掴む。
「む?
今まで後ろにいなかったのか?
別に速くはないと思うのだが」
「足が長いって自慢か――っ!」
平然としてそう返すゼルドに、ディグレイは思わず怒鳴り付ける。
しかしゼルドはそれを意にも止めずに、捕まれたままの肩をそのままに、ディグレイを引き摺るようにして歩き出した。
「……ここに座るか。
む?
座らないのか?
どうしたんだそんなに息をきらせて」
「お前、実は人の話なんて聞いてねぇだろ……」
呆れるディグレイを尻目に、ゼルドは左側の一番前の席に腰を下ろした。
ディグレイもそれに倣う。
「無駄に疲れた……。
お前、マイペースとか言われねぇ?」
「マイペース?
何だそれは。
……む、確か、一度だけ師匠がそんなことを言った気が」
無表情のまま首を傾げるゼルドに、ディグレイはまだ見ぬ師匠に心底同情した。
しかしふと気付いて、なぁと声をかける。
「つか、師匠?」
「師匠だ。
因みに、師匠はここの先生だ。
確か、……何だったか、授業を受け持っていると聞いたことがある」
「先生なんだから当たり前だろーが……
でも、何のつてがあって教えてもらってたんだ?」
ディグレイは脱力しつつも、興味津々だ。
ゼルドは不思議そうにしながらも、答える。
「兄さんが言うには、師匠は大親友だそうだ。
師匠が言うには、腐れ縁だそうだが」
「…………」
その答えにディグレイは沈黙した。
更に、まだ見ぬ師匠が不憫になってきた。
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