入学式は波瀾万丈

7/12
前へ
/16ページ
次へ
「む?どうしたのだ、黙って」 「……ご愁傷さまって思ってたんだよ」 溜め息をつきながら返すも、ゼルドは思案顔だ。 ディグレイは、それに更に脱力した。 ……とまぁ、何とも和やかで力の抜ける会話をやり取りしていた時だ。 ゼルドの座っている席の前で、一人の少年が立ち止まった。 その隣には、可愛らしく可憐な少女が控えめに立っている。 「?何か用か……?」 少年と少女を気にも止めていないゼルドの代わりに、ディグレイが少年に声をかけた。 少年はそれに、居丈高に応じる。 「退け」 一言。 理由も言わずに要求だけを突きつけてくる少年に、ディグレイは思わず絶句した。 それを否定ととったのか、少年は冷ややかにディグレイ……ではなく、ゼルドを見据える。 「聞こえなかったのか? 退け、と言ったんだ。 そこは、僕の席だ」 「あっ、あの……ディリィ様……っ。 も、もう座っていらっしゃるし……その……」 余りにも傲慢な要求をする少年────どうやらディリィと言うらしい――――に、少女は慌てたように取りなした。 しかしそんな少女のとりなしを、ディリィは冷たい視線で制す。 「も……申し訳、ありませ、ん……」 少女は泣きそうな表情をして、一歩、後ろへ下がった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加