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「む?どうしたのだ、黙って」
「……ご愁傷さまって思ってたんだよ」
溜め息をつきながら返すも、ゼルドは思案顔だ。
ディグレイは、それに更に脱力した。
……とまぁ、何とも和やかで力の抜ける会話をやり取りしていた時だ。
ゼルドの座っている席の前で、一人の少年が立ち止まった。
その隣には、可愛らしく可憐な少女が控えめに立っている。
「?何か用か……?」
少年と少女を気にも止めていないゼルドの代わりに、ディグレイが少年に声をかけた。
少年はそれに、居丈高に応じる。
「退け」
一言。
理由も言わずに要求だけを突きつけてくる少年に、ディグレイは思わず絶句した。
それを否定ととったのか、少年は冷ややかにディグレイ……ではなく、ゼルドを見据える。
「聞こえなかったのか?
退け、と言ったんだ。
そこは、僕の席だ」
「あっ、あの……ディリィ様……っ。
も、もう座っていらっしゃるし……その……」
余りにも傲慢な要求をする少年────どうやらディリィと言うらしい――――に、少女は慌てたように取りなした。
しかしそんな少女のとりなしを、ディリィは冷たい視線で制す。
「も……申し訳、ありませ、ん……」
少女は泣きそうな表情をして、一歩、後ろへ下がった。
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