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それを当然のように見てから、ディリィはまたもやゼルドを睨み付けるようにして見る。
「どこの下級貴族かは知らないが、随分と世間知らずなようだな。
――――名門マクフェリア家に楯突いて、ただで済むと思っているのか?」
それを聞いた目の前の男が、平伏でもすると思ったのだろう。
ディリィは自信に溢れた目をゼルドに向かってやった。
しかしその目が見たのは、ディリィの予想とは余りにかけ離れた、怒りを纏う空気だ。
「……お前、貴族か……」
ゼルドの口から、底冷えするような低い声が漏れる。
それにディリィだけでなく、隣にいたディグレイまでもがおののいた。
「ゼッド……?」
ディグレイの疑問の声も空気に溶ける。
ゼルドは椅子から立ち上がって、口の中で小さく呪文を唱えた。
その瞬間。
ゼルドの手に剣が握られているのを見て、ディグレイは目を見開いた。
「おい!ゼッ」
「救いようがないな。
貴族は、いつも、奪ってばかりだ……!」
ゼルドは鋭くディリィを睨み付けると、握られている剣を
――――振り切った!
それに驚いたのはディグレイと少女で、二人の叫び声が響く。
しかし、ディリィは冷静だった。
ディリィもまた小さく呪文を唱えると、その手に剣を顕現させる。
そのまま、振り切られた剣を受けた。
「……っ!」
しかしその重さに、ディリィは小さく呻く。
強い。
ディリィはゼルドの力量を見るや、舌打した。
「おい!
お前、貴族に怨みでもあるのか!?
僕じゃなかったら、死んでいたぞ!」
ディリィは油断せずに剣を構えながら、ゼルドに問いかける。
ゼルドはそれに、小さく凄絶な笑みを浮かべた。
「お前も同じ貴族だろう?」
「どこの貴族かは知らんが、一緒にするな。
マクフェリア家は名門だ」
そのまままた振り切られた剣をギリギリ受けて、ディリィは冷や汗の浮かんだ顔を歪める。
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