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「で?
何を不思議に思ってやがる。
全部、とか言いやがったら殺す」
男はウンザリとした表情は崩さずに、しかし少年に視線を向ける。
その態度とは裏腹な親切さに気付いているのかいないのか……、少年はうむ、と重々しく頷いた。
「一体、誰が三界に魔術を伝えたのだ?
師匠。
師匠は“魔術学園”という所で魔術を学んでいるのだろう?
そういうのは伝わっていないのか?」
魔術を伝えた人物。
魔術をこの三界の住人よりも先に見付け、使うことの出来た人物。
その質問に、男は小さく息をついた。
「ったく、どいつもこいつも……今有るもんを誰が伝えたなんだ、どうだって良いじゃねぇか」
「む……誰が伝えたのかも分からぬものを使うなど、気味が悪いだろう」
少年はさも当然のようにそう言うと、男に綺麗な、碧の目を向ける。
男はその視線に負けたように、もう一度くしゃりと髪をかきあげた。
その口から出るのは、ため息混じりの言葉。
「さぁな。
誰かなんざ知らねぇよ。
でもまぁ、そんなもんを知って、わざわざ教えるような物好きだ。
神、なんじゃねぇの?」
欠片も信じていないような。
そんな雰囲気のまま。
男は、ただめんどくさそうに言った。
その言葉に少年はむ、そうか……と呟いて。
静かに、目を瞑った。
「神、か……。
そうかもしれんな。
だとしたら、何のために魔術を伝えたのか」
少年はその小さな体には似つかわしくない、重々しく深い口調で……男の言った神、と言う言葉を反芻した。
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