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「で、お前は?」
ディグレイは笑みを浮かべたままに、まだ名乗りをあげていない少年を、期待のこもった眼差しで見てくる。
少年はそれに、嘆息して答えた。
「ゼルド、だ。
ゼルド・ランドライン」
「ゼルドか……言いにくい名前だなー。
決めた!
俺はお前のこと、ゼッドって呼ぶ!」
ディグレイはビシッと少年────ゼルドを指差して、満足そうに、自慢気にふんぞり返る。
自分のつけたあだ名がお気に召したようだ。
しかし対してゼルドは、微かにだが顔をしかめる。
こちらの表情からして、あだ名を歓迎してはいないことが、容易に汲み取れた。
「む……ゼルド、だ。
ゼッドとは何だ、奇妙な名をつけるな」
「別にいいだろ!
ゼッド、ゼッド……はい決まりっ!
さ、体育館行くぞ」
しかしディグレイはそんなゼルドの文句など気にも止めずに、さっさと歩き出す。
しかも途中後ろを振り返ってはゼルドを促してくる。
早く来いよと大きく手を振られて、悪目立ちすること受け合いだ。
ゼルドはそれを無視し、他人の振りをするも……ふと自分が体育館の場所を知らないことに気付き、仕方無いと歩き出した。
体育館へのナビは、ずいぶんと騒がしいものになりそうだ、と思いながら。
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