入学式は波瀾万丈

4/12
前へ
/16ページ
次へ
「で、お前は?」 ディグレイは笑みを浮かべたままに、まだ名乗りをあげていない少年を、期待のこもった眼差しで見てくる。 少年はそれに、嘆息して答えた。 「ゼルド、だ。 ゼルド・ランドライン」 「ゼルドか……言いにくい名前だなー。 決めた! 俺はお前のこと、ゼッドって呼ぶ!」 ディグレイはビシッと少年────ゼルドを指差して、満足そうに、自慢気にふんぞり返る。 自分のつけたあだ名がお気に召したようだ。 しかし対してゼルドは、微かにだが顔をしかめる。 こちらの表情からして、あだ名を歓迎してはいないことが、容易に汲み取れた。 「む……ゼルド、だ。 ゼッドとは何だ、奇妙な名をつけるな」 「別にいいだろ! ゼッド、ゼッド……はい決まりっ! さ、体育館行くぞ」 しかしディグレイはそんなゼルドの文句など気にも止めずに、さっさと歩き出す。 しかも途中後ろを振り返ってはゼルドを促してくる。 早く来いよと大きく手を振られて、悪目立ちすること受け合いだ。 ゼルドはそれを無視し、他人の振りをするも……ふと自分が体育館の場所を知らないことに気付き、仕方無いと歩き出した。 体育館へのナビは、ずいぶんと騒がしいものになりそうだ、と思いながら。             
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加