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「…………でかっ!」
体育館の前……いや、もう体育館と言うのすらおこがましい豪奢な建物を見て、ディグレイは思わずといった風に声をあげる。
しかしそう声をあげてしまうのも仕方無い。
実際、ゼルド達よりも先に体育館に到着したらしい新入生達も、ポカンとした表情で体育館を見上げている。
しかし。
何の感慨すらもないのか、スタスタと体育館へ近付いていくゼルドに、ディグレイはまるで酢でも飲んだような顔をした。
「お前……驚かねぇわけ……?
実はすっげぇ金持ちの坊っちゃんとか」
「違う」
ゼルドはしかしそれを一蹴し、鋭い瞳でディグレイを見る。
それに、まるでお前は?と無言で聞かれているようで、ディグレイは咄嗟に答えを口にした。
「や、……俺は普通。
普通の町から来た、普通の魔術師」
「そうか」
ゼルドはその答えに瞳から鋭さをおさめると、立ち止まっているディグレイをそのままに体育館へと足を踏み入れる。
「て、ちょっとは待てっ!」
ディグレイはそんなゼルドを見て、自分も早足に体育館へと入った。
そして。
そこでまた、ディグレイは立ち止まることとなったのだ。
「うわ……」
────広い。
しかも窓からは外の光がいっぱいに入り、優しい明るさを生み出していた。
そして魔術だろうか。
辺りには幻想的な……蝶のようなものがふわふわと飛んでいて、何とも不思議だ。
「綺麗……」
ディグレイは暫く惚けたようにその場に立ち止まり続ける。
しかしハッと気付き、ゼルドの姿を探した。
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