33人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、今私うまいこと言った?」
謎の女生徒は声を潜めて笑う。
いや、ていうかそれよりも、その無駄に大きな黒い瞳に微量な水分を含んでいるのは何故なんですか。
別に訊かないけど。
「ところでさっ、君なんて名前?ちなみに私は高梨由香里。よろしくっ!」
取り敢えず、という言葉がこれほどベストフィットしたのはいつぶりだろうか。
とりあえず俺は質問に応えといた。
「そこ、入学式中だ、静かにしなさい」
と、担任鈴木の注意を受ける。早速目をつけられたかもしれない。
それに対し謎の女生徒は不機嫌そうに、
「……はーい」
とだけ応えた。大丈夫なのかこいつ。
10秒程経って担任鈴木が向こうに行ったのを確認すると、奴はまた声を潜めこう言った。
「怒られちゃったね。まったく、駄目じゃんうるさくしちゃ」
笑顔でそう言う女生徒に対し『お前だろ!』と、俺は心の中でツッコんだ。そう、あくまで心の中で。
「ありゃ、無視ですか。怒った?」
俺の心のツッコミは当然彼女には届かなかったようで、どうやら無視したと思われたようだ。
そういえば返事するのを忘れていたな、と俺は首を横に振る。
「良かった!じゃ、また怒られるといけないから教室でね」
と、嬉しそうにそれだけ言って前を向いてしまった。
……妙なのと仲良くなっちまった。テンション高すぎだ、そういう奴は彩一人でいい。
俺はここの席になったことを恨みつつも眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!