第一章

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 数分後、拍手喝采のせいで目を覚ます。  まだ半開きの重いまぶたを無理矢理こじ開けながら前を見ると、壇上には一人の女生徒がいた。  ……生徒会長か?  不自然なくらいに大きすぎる拍手の音だったから誰かと思ったぜ。相当人気があるらしい。 「皆さんおはようございます。生徒会長の柊です。皆さんは今日から高校生となりますね。新たな生活でいろいろと浮かれているとは思いますが……我が校の恥とならぬよう十二分に注意していき、これから三年間頑張っていって下さい。そして――」  ……良く言うぜ。  実はこの可憐で美麗なスーパービューティーフェイスの生徒会長は、俺の従姉妹なのだ。  そして、いつものあいつを知っている俺からすれば背筋が凍るようだ。気持ちが悪い。  まるでモデルのようなスタイルで外見は非の打ち所がないわけだが、内面的には人外と言っても過言ではないくらいに非の打ち所しかない。  まぁある意味、猫被りで生徒会長まで成り上がれたのだから大物だが。 「完璧な生徒会長だねっ!」  隣から何か聞こえた気がしたが気のせいだろう。 「それでは皆さん。体調を崩さないように気をつけて下さいね。以上です」  生徒会長が礼をし、長く綺麗な黒髪をなびかせながら壇上から降りる。とても耳障りな拍手が鳴り止まない。  そこで、ふと隣を見る。 ――そこには彩がいた。  いや別に彩がいるのは不自然ではないのだが。妙な感じがする。  さっきのまでは、見知らぬハイテンション女じゃなかったか? 寝る前だったので、自分の記憶に自信はないが。 「……夢か」  俺は自分にそう言い聞かせながら、始業式が終わるまでのおやすみタイムを満喫するのだった。
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