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『約束取立人 ロミ』
そう書かれた名刺を、半ば呆然と見ていた。
あぁ、混乱するとはこういう状態を指すのだと実感――いや痛感した。
名刺には写真が印刷されていた。その方が相手に覚えてもらえるからだろう。
私は即刻忘れたいけど。
と、そんなことは一先ず置いておいて
「さっさと降りてくれない? 道のど真ん中で寝る習慣なんてないんだから!」
グルッと横に回転し、上に乗っている――重さからして――子供を振り落とす。
ゴン! と小気味よい音と同時に身体が軽くなる。
「あいたた……」
ぶつけたらしい後頭部を抱えながら涙目で悶えている。
女の子だ。
白のワンピースに赤いバッグを肩に掛けている。見たところ10歳ぐらいだろう。
ようやく痛みが引いたのか、すくっと立ち上がり咳ばらいを一つした。
「いきなり振り落としたことに関しては、後で詰問するとして……。改めてまして、約束取立人のロミと申します」
顔、というか外見にそぐわない言葉使いに頭の中の警鐘が鳴り響く。
これはヤバイ。絶対面倒なことになる。
適当に話をして、帰ろう。家まで送り届けるという選択肢はなかった。
それほどに、この子から発せられた言葉には淀みがなく不気味だった。
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