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「あの、聞いてます?」
少女は怪訝な表情をする。
「え、ああ勿論……」
聞いていなかった。
それよりも
「ねえ、ちょっと聞いてもいいかな」
子供に言いきかせるように――実際に子供だけど――身をかがめて目線を合わせる。
その時、初めてその子の顔をはっきり見た。
肩まで伸びた黒髪は、ウェーブがかかっていてフワリとしている。
目鼻立ちは、すっきりしていて、薄い唇は今はキュッと閉じられている。
全体的に可愛い印象だが、目だけは違った。少し吊り上がったそれは、既に女としての妖艶さを纏っている。
瞳に吸い込まれそうな感覚に陥っていた私を、現実へと引き戻したのは少女の言葉だった。
「あなたって人の話は聞かないし、かと言って喋らないし、何がしたいのですか?」
「あ、あぁごめんなさい。ちょっとボーっとしてたの」
「あなたのちょっととは、随分長いのですね」
「はぁ……。ごめんなさい」
思わず謝ってしまった。
じゃなくて!
バッと立ち上がって、人差し指を空へ向ける。
「説明してくれないかしら?」
少女は首を傾げる。「私の方が説明して頂きたいです。いきなりカクレンボをするなんて何を考えているのです?」
「この指止まれじゃないわよ! しかも何でカクレンボなの」
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