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「じゃあ、夕陽に向かって走るとか?」
右に倒していた首を反対へ傾げる。
くそう、可愛いな。
「そんな追いつけない目標なんて目指したくないわ」
「……今まで受け継がれてきた青春ドラマを全否定ですか」
「いや、最近だとギャグマンガくらいしか出てこないフレーズじゃないかしら」
「今度は私の存在をギャグにしましたね!」
ああ、もう! キリがない。
「……ちょっと落ち着きましょう」
「私はずっと落ち着いていました」
……うん。我慢は大切よね。
「状況を整理しましょう。私は、学校からの帰りで、近道であるこの道を歩いていた」
「そこから整理しますか」
呆れた顔でため息をつかれたが、無視する。
「この道は、裏道なので周りには高い建物はない。ここまでは大丈夫?」
「私はあなたの頭が心配です」
「……あなた、一言居士って言われない?」
「いいえ。百言居士とは言われます」
なるほど納得。
じゃなくて!
「もう一回聞くけど、あなたどこから“落ちてきた”の? それも私の背中目掛けて」
すると少女は、得心が言ったように何度も頷いた。
「なるほど、それが聞きたかったのですか。ならば答えは簡単です」
少女は、天使のような笑みを浮かべて言った。
「地獄から落ちて来ました!」
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