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闇の中に点々と浮かぶ炎は、夜空に輝く星のように見える。
ぼんやりと周囲を見渡しているうちに、自分の手の中に1本の燭台があることに気づいた。
手元からろうそくの炎の光が、かすかに瞬いている。
それは、オレンジ色の光の球のようにも見えた。
ずっしりとした重量を感じた。
そして何故、自分がこの場所にいるのか、その理由が思い当たらないことに気づいた。
点々と星のように輝く炎は、壁にかけられたランプやテーブルに置かれた燭台から光を放つ、無数のろうそくからの光だった。
ひとつひとつは頼りない輝きではあったが、これだけ集まっていれば大きな光源となっている。
目をしばたかせながら
周囲を見渡すと、レンガ造りの建物の中に居ることがわかった。
右の木造のテーブルに置かれた燭台は、手に持っているものと同じ形をしていた。
全体が金色で塗られ、ろうそくが置かれている部分は、バラの花を模した形をしている上品なデザインだった。
一歩、足を踏み出すと、ろうそくの炎がゆらりと前後に揺れた。
頼りない光に照らされていた周囲の風景も、同時にゆらりと動いた。
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