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話がまとまった後のユエの動きは、凄まじく早かった。
先ず、カードで数名の人間を呼び出し、シルメリア難民が隠れ住んでいる場所を探すように指示を出す。
次に、ユエの元へ届いた「シルメリア難民の死亡報告」にもれがないかを調べるように、新たに棗達が確認したシルメリア難民の死体がある場所へ人を向かわせるのと同時進行で調べるよう、指示を出した。
最後に、シルメリア難民の現状を把握する為に、難民達のリーダーと会う場所を作りたいと明言した。
当然、ユエがシルメリア難民と「会って話しがしたい」と明言した時、ユエに呼び出された者達全員が「それは危険だ」と言って反対した。
反対したが…。
「タワナ国を、危険から回避させる為には必要です。」
ユエは、その一言で反対する意見をはねのけてしまった。
棗達は、ユエの行動と決断の早さに、只々圧倒されてしまい、ユエが一息つくまで手持ち無沙汰で待つ事になった。
「ユエさんって、やっぱり凄いな~。」
待っている間、棗は隣でずっとユエを見ていたが、圧倒されて「凄い」としか感想が言えないまま、憧れに近い感情を胸に、ユエに尊敬の眼差しを送り続けていた。
一方、アレンとシアは…。
メルギドの村から程近い森の中に居た。
その場所は、大きな岩を中心に小さな広場の様になっている場所であり、昔アレンがトウヤに殴りかかった場所でもある。
そんな、アレンにとって…少し苦い思い出が埋まっている場所で、アレンは肩で大きく息をしながら、岩の上で仁王立ちしているシアを見上げる。
「も…もう一度…」
息をするのもキツそうなアレンの声。
「ジャリガキ…、あちこち傷だらけです。
少し休憩するですよ。」
シアは、そんなアレンを気遣うように声をかけるが、アレンは前かがみになりながらも、首を横に振った。
「まだだよ。
まだ、オイラは動ける…。
だから…シア、頼むよ。」
汗だくな顔をあげ、真剣な表情でシアを見つめるアレン。
シアは、アレンの目を見て、何も言わずに空中に幾つもの拳大の氷の塊を浮かべた。
「分かったです。
じゃあ、もう一度いくですよ!
しっかりと氷を見て、先ずは避ける事だけに集中するです!」
シアが固い声でそう言うと、アレンは低く身構えて、シアが氷を放つ瞬間に備える。
「オイラは…絶対に、強くなるんだ!」
固い決意を胸に、アレンは氷に向かって駆け出して行った。
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