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ホムラ国首都「ヒイラギ」
その中心にそびえる、ホムラ国最大の建造物。
それが、ホムラ国の女王「森羅(しんら)」が居る宮殿。
「白い砦」と呼ばれるその建物は、高さ4mの白い壁が全体を覆い隠し、外からは青い屋根の部分しか見えない。
そんな宮殿内の一室で、トウヤとミリィが椅子に腰掛け、女王が来るのを待っていた。
「参った…」
トウヤが、昨日からずっとボヤいている言葉を口にする。
そんなトウヤのボヤきを聞いたミリィは、居心地悪そうに椅子に座ったまま、トウヤをチラチラと横目で見ていた。
勿論、トウヤは報告書で悩んでいるのではない。
あの請求書を、どうやって森羅に見せれば良いかを、昨日からずっと考えているのだ。
最初は、シェインに森羅と面会させる事を考えた。
だがその考えは、ルナにあっさりと無理だと教えられた。
次に考えたのは、エリシアを連れてくると言う案だったが、これもエリシアから火球を投げつけられてしまい、あえなく潰えてしまった。
そんなこんなで、昨日からずっと「参った」と言っては、頭を抱えているのだ。
そんなトウヤを見かねたミリィが、トウヤに話しかける。
「トウヤ…。
それだけ考えて、良い案が出てこないなら、もう諦めて正直に『請求書の金額が高すぎて、払えなくて困ってる』って言うしかないわよ。
私も一緒にお願いするから、安心しなさいよ。」
ミリィのこの言葉で、安心したのか…それとも、ジタバタしても無駄だと諦めたのか…。
トウヤは「そうするかな…」とため息混じりに呟き、森羅が来るのを待つことにした。
「良く考えたら、森羅様とも知らない仲じゃないし、この請求書を何とかしてくれるよな!」
しかし、こんな甘い考えなど通るはずもなく…。
「――貴様の請求書を、私が払えると思うか?」
それが、森羅の答えだった。
「良く考えれば分かるだろう?
貴様達“エンブ”が、組織として必要とする予算であれば、私も許可しましょう。
しかし、ドラゴンの母娘が壊した物の弁償を、どうして…私…『国』がするのですか?」
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