~女王、森羅の提案~

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楽観的に考えていたトウヤは、森羅の言葉に愕然(がくぜん)としたらしく、情けないくらい口を開けたまま呆然としている。 「森羅、壊した私が言うのも変だけど…。 お母様の性格から考えて、もし『お金を払え!』なんて命令したら、このホムラ国が無くなるわよ?」 呆然とするトウヤの隣に座るミリィが、脅しとも取れる事実を言うと、森羅はこめかみ辺りをさすり始める。 「ドラゴンよ。 貴様の母親の話は聞いている。 言い難いが…とても“激しい”性格らしいな?」 とてつもなく優しい言い方で、エリシアを表現する森羅に、ミリィは苦笑しながら頷いた。 「確かに…、国を破壊されるのは困る。 だが、私も一国の主として、特定の誰かだけを特別扱いには出来ない。 友人としてなら、いくらでも相談に乗りたいが…」 森羅の言う事は正論だろう。 仮にも森羅はホムラ国の女王。 そんな立場の人間が、誰かを特別扱い出来るハズがない。 それでも、女王としてではない、1人の人間としての気持ちを言ってくれた森羅に、ミリィはそれ以上何も言えないまま頷き、トウヤを軽く揺すって正気に戻させる。 正気に戻ったトウヤは、森羅に何か言おうとして口を閉じてしまう。 …ミリィと、結婚1年の記念に旅行したかったんだけど、この請求書を支払ったら、無理だな。 うつむき、ついつい心の中で愚痴をこぼすトウヤ。 すると、その心の声を聞き逃さなかったミリィが、勢い良く椅子を倒しながら立ち上がる。 「森羅! さっきまでの話を取り消すわ! 今すぐ、私の為に請求書を何とかしなさい!」 いきなり態度を豹変させたミリィに驚いて、森羅は目を見開いて固まり、トウヤは「しまった」と思ったのか、盛大に舌打ちしてミリィを宥める。 「ミリィ。落ち着け! 森羅様の言う事は正論だし…、旅行なら、また次の機会にすれば良いだろ?」 「イヤッ! 結婚記念の旅行まで無くなるのは、イヤッ! 森羅!今…すぐ! 何とかしなさいよ!」 全身から紫色の雷を放電させながら、両肩を押さえるトウヤをものともせずに、ミリィが森羅へ近付いていく。 あまりの迫力に、椅子に腰掛けていた森羅は、椅子に座ったままジワジワと後退していく。 「し~ん~ら~! 私の、結婚記念の旅行は奪わせないわよォ!」
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