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「全く…お前は…。
請求書は、エリシアに文句を言わないといけない話であって、森羅様には関係無い。
それを、脅して『金払え!』って言うのは違うだろ?」
森羅の直ぐ隣で、トウヤが目元をピクピク震わせながら、正座してうなだれているミリィに向かって説教を始めている。
「でもっ!結婚記念の旅行!
それに、貴方だって…最初は、森羅に請求書を払ってもらおうとしてたクセに…」
必死に言い寄るミリィに、イタいところを突かれたトウヤは、「ウッ…」とくぐもった声を漏らしながら、森羅へ振り返った。
振り返ったトウヤに、森羅は嫌な予感がしたのか、椅子の背もたれに身を預けて身構える。
そんな森羅には構わず、トウヤは何を思ったのか、ミリィの隣まで後退り、ミリィと同じように正座した。
更に嫌な予感を深めた森羅は、かすれ声で問い掛ける。
「トウヤ。
何度も言うが、誰かを特別扱いには…」
「仕事をください!」
森羅の話を遮り、トウヤが切実な声でお願いしてくる。
すると、そんなトウヤを見て、ミリィがトウヤと同じように森羅へ「仕事をください!」と訴えてくる。
困ったのは森羅だ。
森羅は、頭痛のしてきた頭を両手でさすり、トウヤに問い掛ける。
「トウヤ…貴様は、既に『エンブ』の隊員だろう?
更に『仕事をください』と言われても、この私にどうしろと言うのだ?
大体、今回の報告書も…」
そこまで話した森羅は、何を思ったのか、報告書を熱心に読み返し、トウヤ達に目を向ける。
「この報告書の内容。
これと同じ事件が、今各国で起こっている。」
突然、話を切り替えられたトウヤ達は、嫌そうな顔を森羅に向けたまま、黙って話の続きを促す。
「つまり、この事件を解決に導く為には、世界中を巡らねばならないと言う事だ。」
森羅が言いたい事を、いち早く理解したトウヤは、何度も頷きながら言った。
「成る程!…つまり、事件解決の為に世界を回る!
ついでに、旅行が出来るって事ですね!」
ホムラ国内で、既に8人が死亡している事件なのだ。
そんな事件なのに、その事件を捜査するついでに旅行など、不謹慎極まりない話だが…。
旅行がしたいと言う気持ちが先行して、トウヤは思わず顔を輝かせてしまう。
だが…、そんなトウヤの頭を背後からガシッ!と掴んで、ミリィが低い声で呟いた。
「結婚記念の旅行なのに、仕事で行くの?」
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