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「だって…お前…仕事で行かないと、お金が無いんだぞ?」
頭をガッチリと掴まれたトウヤは、ミリィへ振り返る事も出来ずに、ミリィへ今の現状を突き付ける。
そんなトウヤを、何かが気に入らないらしい。
ミリィは、ギリギリと頭を掴んでいる手に力を込めていく。
「痛い痛い痛い痛い痛い!」
段々と、声のトーンを上げながら、悲鳴をあげるトウヤを無視して、ミリィはそのまま森羅を睨み付ける。
「森羅、貴女に聞くわ。
トウヤの事は、私が一番分かってる。
今のトウヤは、私の気持ちに応えられると思って舞い上がってるだけ…。
どうせ…事件解決を優先して、旅行なんか後回しにするわよ。
でも…森羅。
私は、貴女の事は分からない。
さっきトウヤが言った…『事件を解決しながら旅行が出来る』って言った内容と同じ事を、貴女は考えていたの?
この世界を、平和な世界にしたくないの?」
人が死んだ事件。
しかも、それが各国で起こっている。
それなのに、トウヤが旅行にうつつを抜かすなんて、出来るはずがない。
そう信じて疑わないミリィの言葉に、トウヤは顔色を変えてうつむき、森羅は逆に嬉しそうに微笑んだ。
「やはり、貴様達は2人で1人なのだな…。
ドラゴンよ。
貴様が、この世界の平和を願ってくれて、嬉しく思います。」
そう言った森羅は、ミリィに向かって頭を下げると、改めてトウヤに話し掛けた。
「トウヤ。
私は、事件解決のついでに、2人で旅行をしろと提案したりはしない。
この事件と合わせて、私の提案を別の仕事として引き受けてくれないだろうか?」
舞い上がっていた自分自身が許せないトウヤは、穏やかな声で尋ねてくる森羅を見ることが出来ず、下を向いたまま頷いた。
そんなトウヤの頭から手を放して、ため息混じりに苦笑するミリィを見ながら、森羅は2人に向かって話し始めた。
話を聞き終えた2人は、トウヤが落ち込んでいる事もあり、答えを出さないまま、宮殿を後にした。
「あんな提案を森羅が私達にするなんて…、思わなかったわよねぇ。」
エンブへと向かう道すがら、ミリィがトウヤに話し掛けるが、トウヤは未だに肩を落としてうつむいている。
「トウヤ!
いつまで落ち込んでるのよ!」
そんなトウヤを見かねたミリィが、トウヤの背中を優しく叩くと、トウヤは「ゴメンな」とミリィに謝った。
「謝らないのよ!
トウヤが迷ったら、私が助けてあげるわよ!」
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