~女王、森羅の提案~

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トウヤを励ますミリィに、トウヤは「ありがとう」と小さく呟いて、先程までより力強い足取りでエンブに向かって歩いていく。 それでも、トウヤがまだ落ち込んでいるのが分かるミリィは、前を歩くトウヤの背中にいきなり飛び付いた。 予想していなかったミリィの行動に、トウヤは前に倒れそうになりながらも、何とか持ちこたえる。 丁度、ミリィをおんぶする格好になったまま、トウヤが黙っていると、ミリィが恥ずかしそうに耳元で言った。 「ホラ! スケベで優しいバカ亭主。 私をおんぶして帰りなさいよ。 そうしたら、気分も明るくなるわよ!」 背中に当たるミリィの胸の感触と、甘い匂い。 いつものトウヤなら、理性が飛ぶところだが、今はミリィの、トウヤを元気付けようとしてくれる気持ちが嬉しくて、トウヤは「胸の感触が気持ち良いな」と言いながら、ミリィを背負ってエンブへと再び歩き出した。 心の中で何度も「ありがとう」と伝えながら…。 ミリィは、そんなトウヤの気持ちが嬉しくて、エンブに着くまで、ずっとトウヤの背中に頬を寄せてはにかんでいた。 すっかり元気を取り戻したトウヤは、森羅から言われた提案を話す為に、食堂にみんなを集めていた。 みんなとは…、シェイン・棗・ルナ・シア・タエ婆ちゃん・エリシア・クラシルだ。 仲間達は、広い食堂を借り切って、みんなが思い思いの席に腰掛け、トウヤの言葉を待つ。 そんな一同を前に、トウヤが森羅の提案を話し、その途端に全員が言葉を無くしてしまう。 押し黙る仲間達の中、ルナが最初に口を開いた。 「シルメリアの難民を助けろ…と言うのですか?」 そう……。 森羅の提案とは、『シルメリアの難民を助けて欲しい』と言う内容だった。 「それを…シルメリア大戦に参加した、俺達にさせるのか?」 ルナに続き、シェインが嫌そうな声で、トウヤに問い掛ける。 すると、トウヤは大きく一度頷いて、森羅の伝えた内容を詳しく話し始めた。 「事の発端は、“あの報告書”だよ…。」 魔力を全て奪われ、人が死ぬ。 その事件は、実はホムラ国だけで起きている訳ではなく、世界各国で起きていると言うのだ。 「しかも、他の国でも、被害者はシルメリアの難民らしい。」 更に、他の国でも目撃者が居ない上に、酷い国では…シルメリアの難民が少なくなるのであれば、国として助かると言っている国まであるらしい…。
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