~女王、森羅の提案~

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「酷い国だね~!」 トウヤの話に憤慨して、テーブルを叩く棗に、トウヤは悲しそうに首を振る。 「仕方無い話でもあるんだ。 国としての機能が充分じゃなければ、難民にまで食料や物資を提供するのは無理だし、何よりその国は…」 そこまで話したトウヤは、顔をしかめながら、チラリとルナを盗み見る。 そんなトウヤの様子を見て、棗も何が言いたいのか分かったらしい。 怒りを引っ込めて、居心地悪そうに椅子に座り直す。 「カラナタは、それ程に厳しい状況なのですね。」 トウヤや棗の様子を見て、ルナが悲しげに呟き、何かを決意したらしく、強い意志を込めた目でトウヤを見つめた。 「女王陛下の提案に、協力いたしますわ。 私の生まれ育った国が、再び昔の生活に戻れるように…。 私達がシルメリアの難民を助ける事で、その手助けが出来るのであれば、私は手伝います。」 ルナの、凛(りん)とした雰囲気と、強い言葉に、トウヤは頷き返して、仲間達を見渡す。 「ルナは、森羅様の提案に協力するってさ! みんなはどうする?」 トウヤの問い掛けに、すぐさま棗が「手伝う~!」と言いながら両手を上げ、シェインは渋々といった雰囲気を撒き散らしながら頷く。タエ婆ちゃんやシアは、2人揃ってみんなを応援する為に、厨房へと戻って行く。 おそらく、コーヒーをいれに行ったのだろう。 とにかく、後の2人を除いた仲間達が、森羅の提案に乗ることにしたのは間違い無い。 トウヤは、残り2人へ視線を向ける。 残り2人、エリシアは腕を組んで目をつぶっていて、クラシルはそんなエリシアを見つめている。 「2人は、どうする?」 煮え切らない2人に、トウヤが尋ねると、エリシアが目を閉じたままトウヤに話し掛ける。 「アタシ達は、アンタ達の戦争には関与してないわよ。」 トゲトゲしい、エリシアの声の端々に、「何でアタシ達が協力しないといけないの?」と言う言葉が見え隠れしている。 そんなエリシアに、トウヤでは無く、ミリィがムスッとした顔で話し掛けた。 「お母様が壊した物を、弁償しないといけないから、トウヤは『仕事を下さい』と森羅に頼んだんですよ? それなのに、お母様が協力しないで、また物を壊されたら…」 そこまで話して、ミリィなりに気分が高揚したらしい。 全身から紫の雷を放電し、目は猫のように縦長になる。 「また物を壊されたら、トウヤと結婚記念の旅行に行けなくなるのよ!」
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