~女王、森羅の提案~

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響き渡るノックの音に、ミリィがビックリしてトウヤを弾き飛ばす。 理性が飛んでいたトウヤは、完全に不意打ちとなったミリィの行動に、スケベ顔のまま壁に激突してしまった。 そのまま、声も上げずに壁からズルズルとずり落ち、床の上でピクピクと痙攣するトウヤを無視して、ミリィは慌てながらドアの前に立つ。 動悸が激しいのか、ミリィは両手で胸元を押さえて、大きく一度深呼吸した後、ドアに向かって声をかけた。 「誰?」 短い問い掛けに、ドアの向こう側から、直ぐに返事が返ってくる。 「お久しぶりです。 ユエです。 ホムラ国へ来る用事があったので、会いに来ました。」 「兄ちゃん!ドラゴン様! オイラも居るよ!」 タワナ国の神官にして、今は各村をまとめる相談役も兼任するユエと、その息子アレンの声が聞こえ、ミリィは自然と笑顔になりながらドアを開ける。 「ユエ!アレン! 2人とも、久しぶりね!」 ドアを開けた先に、艶のある黒い髪に青い瞳のユエと、黒い髪に日焼けした肌のアレンが満面の笑みを浮かべて立っていた。 ミリィは、2人を部屋へ招き入れ「ゆっくりしていってね!」と言いながら、ソファを勧め、自分は飲み物を用意する為に台所へと歩いていった。 「ドラゴン様! 兄ちゃんは?」 幼い顔立ちから、背も伸び、精悍(せいかん)な顔立ちになってきたアレンが、昔の口調はそのままでミリィに尋ねると、ミリィは無言で開けっ放しにしている寝室を指差した。 「気絶してるね…」 「ふふっ…トウヤさんも相変わらずで、安心しました。」 呆れ声のアレンと、楽しそうなユエの声に、ミリィは何と答えて良いか分からず、忙しなく手を動かし、飲み物の準備に勤しむのだった。 「アレン、何かデカくなったよな?」 気絶から復活したトウヤの第一声である。 「そうかな?」 自分の体を見て、首を傾げるアレンの隣で、ユエが口元を手で覆いながら笑う。 「アレンも、15歳になりましたからね。 本当に、子供の成長は早いと実感しますよ。」 息子の成長が嬉しくて仕方ないらしいユエに笑いかけながら、ミリィは少し寂しそうに話題を変える。 「でも、本当に久しぶりね。 棗やルナは、貴女達と良く会ってるみたいだけど、私達とは半年ぶりくらいよね? 何か、用事があったって言ってたけど、どんな用事なのよ?」
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