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察しの良いユエは、ミリィがワザと話題を変えたのを直ぐに理解したらしく、少し顔をしかめた後、ホムラ国に来た理由を話し始めた。
「今日は、タワナ国の状況が改善し、一区切り付ける意味も込めて、女王陛下にお礼を言いに伺ったんですよ。」
誇らしげに語るユエによると、シルメリア大戦の時に無くなったクロツキ・レムナドの2つの村も再建し、タワナ国は昔の生活を取り戻せる目処が付いたという事だった。
「それで、今まで物資や食料の補給・確保に協力して頂いたお礼を、タワナ国を代表して言いに来たのですが…」
先ほどまでの誇らしげな表情から一変、急に悔しそうに唇を噛み締めて顔を曇らせたユエは、声のトーンを落として話を続ける。
「女王陛下から、トウヤさん達に依頼された“魔力を奪われて殺された人”の話を聞き…。
悲しい話ではありますが、タワナ国でも同じ事件が起こっている事を伝えました。」
このユエの言葉に、トウヤが真剣な表情になる。
「同じ事件って事は、タワナ国でもシルメリアの難民が殺されているって事ですか?」
トウヤの問いに、ユエは重々しく頷く。
「悲しい話です。
私達は、確かに戦争をした敵同士です。
でも、偶然その国に生まれただけで、戦争に関与していない人も居るでしょう。
それなのに…」
言葉に詰まったユエは、それ以上言えなくなり、ミリィが用意したコーヒーに手を伸ばす。
コーヒーを飲み、大きく息を吐くユエを見て、トウヤはユエに問い掛けた。
「じゃあ、ユエさんも、俺達と一緒にやりますか?
森羅様からの仕事?」
トウヤの誘いに、ユエは直ぐに顔を上げ、何度も頷く。
「勿論、協力します。
私達タワナ国は、トウヤさん達への協力は惜しみません。」
力強いユエの言葉に、アレンも頷いている。
「オイラは、いつでも兄ちゃんに協力するよ!
だから、タワナ国の事件を解決する為にも、オイラを仲間に入れてよ。」
頼もしい事を言うアレンに笑いかけ、トウヤは改めてユエとアレンに向かって、頭を下げた。
「助かります。
どうも…、森羅様から提案されたこの仕事は、一筋縄(ひとすじなわ)ではいかないと思う。
だから、2人が協力してくれるのは、凄く助かる。」
ユエは、頭を下げるトウヤに慌てて、頭を上げさせながら嬉しそうに笑っていた。
「不謹慎だけど…。
何だか、1年前に戻ったみたいよね!」
そう言って笑うミリィに、トウヤも笑顔で頷いた。
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