21584人が本棚に入れています
本棚に追加
その後もしばらくの間、ユエやアレンと昔話に華を咲かせていたトウヤ達だったが、そこに光る鳥が舞い込み、光る鳥はトウヤ達の頭上で弾けると、ルナからの思念を伝えてきた。
「いつまで油を売るつもりですか?
食堂に集まって下さい。」
少し疲れ気味なルナの声を聞いて、トウヤは何やら嫌な胸騒ぎがするのを感じながら、皆で食堂へと向かって行った。
食堂に4人が着くと、他の仲間達は既に揃っていて、何やら宴会の準備を始めていた。
忙しなく動いては、料理を机に並べるシアや、タエ婆ちゃんの指示に従って飲み物を用意する棗を見て、トウヤは顔をしかめながらシェインに問い掛ける。
「何か始まるのか?」
すると、シェインは引きつった笑顔を浮かべ、無言である方向を指差した。
シェインに吊られて、その方向を見たトウヤは、シェインが何を言いたいのか瞬時に理解し、頭を抱えてその場にうずくまってしまった。
…また、何でややこしい事が立て続けに起こるんだ?
うずくまるトウヤの心の声を聞いたミリィも、トウヤの肩に手を起きながらため息を吐く。
「森羅…お母様…」
ミリィの視線の先に、机を挟んで見つめ…もとい、睨み合う2人の女性が居た。
片や、人間の世界で今やトップとも言える権力を持つホムラ国の女王。
片や、人間の世界では最強のドラゴン。
お互いに、一歩も譲らぬ睨み合いは、見る者の神経を無駄にすり減らす。
その2人の間に、かしこまって起立したまま動けないでいたルナは、トウヤを見つけるなり森羅へ一礼し、小走りでトウヤの隣まで駆けていく。
「あの…例の請求書の件で、睨み合ったままなんです。」
うずくまって頭を抱えるトウヤへ、ルナはしなくても良い状況説明をすると、自分の仕事は終わりと言わんばかりに、棗を手伝いに行ってしまった。
こうなると、自然とトウヤに周りの視線が集まる。
トウヤは、緩慢な動作で立ち上がり、盛大にため息を吐いて、森羅とエリシアの側へと歩いていく。
ミリィも、トウヤの背中に隠れる様にして、森羅とエリシアに近付いて行った。
「エリシア。
俺に『手伝う』って言ったのは嘘か?」
トウヤの問いに、エリシアが一層眼力を強めて、トウヤを睨み付けてくる。
トウヤの背中に隠れるミリィが震えるくらいの眼力を前に、トウヤは静かに言葉を続けた。
「誇り高きドラゴンは、嘘をつかないだろ?」
この瞬間、エリシアはトウヤに負けた。
最初のコメントを投稿しよう!