~女王、森羅の提案~

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自分で「手伝う」と言った以上は、エリシアが自分の言葉を曲げられない事を熟知しているトウヤの読み通り、エリシアはもう一度トウヤを睨み付け、諦めたように言った。 「ふてぶてしい態度まで身に付けて、何だか立派な“ドラゴンの夫”になってきたわね。」 どこか嬉しそうなエリシアの言葉に苦笑で返し、トウヤは森羅へ話し掛ける。 「森羅様が来たって事は、あの提案をする為ですよね?」 今まで、森羅なりに気を張り過ぎていたのだろう。 突然話題を振られた森羅は、何度か目を白黒させた後、思い出したように口を開いた。 「そ…そうでしたね。 私とした事が…。」 恥ずかしそうに一度うつむいた森羅は、無理やり笑顔を作り、全員に向かって話し掛けた。 「トウヤ達が来た後、タワナ国を代表して、ユエ様が来て下さった。 それで、私なりの激励を送るつもりで、エンブに来たのだ。」 優雅な仕草でユエを差し、森羅が更に声を大きくする。 「このホムラ国が誇る最高戦力にして、最高の仲間達であるそなた達に、私から改めて願いを言おう。 平和な世界を、1日も早く取り戻す為に、皆で各国に移動して欲しい。」 もったいぶった話し方で、全員へと話しかけ続ける森羅に、今までどこに居たのかすら分からなかったクラシルが問い掛ける。 「各国へ行けと言うが、実際に我等は何をするのだ?」 いきなり口を挟んできたクラシルに、トウヤは「居たのか!」と軽く驚きながら、森羅へ話し掛ける。 「確かに、クラシルの言う通りです。 森羅様、俺達はシルメリアの難民を、どうやって助ければ良いんですか? それに、同時進行で“魔力を抜かれて殺される”って気味の悪い事件も調べないといけないんでしょ?」 今まで、居たことすら気付かれていなかった事に肩を落とすクラシルを指差しながら、トウヤが問い掛けると、森羅は頷いて、ルナに声を掛けた。 棗を手伝っていたルナは、森羅の呼び掛けに頷き、どこから出したのか分からないが、何やら書類を取り出して、説明を始めた。 「具体的に何をするかについてですが…。 今回は、シルメリアの難民がいる地区へと各グループで乗り込み、シルメリア難民の現状を探りつつ、魔力を奪われる事件の捜査をします。」
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