21584人が本棚に入れています
本棚に追加
束になった請求書を受け取りながら、シェインにしては珍しいくらい憤った声で言うのに対して、ルナは楽しげに肩をすくめてみせた。
「私に言われても…。
私に、あの2人を止められると思いますか?」
確かに、ルナの言う通りだ。
人間である以上、“あの2人”を止めるのは至難の業だろう。
「全く…。
俺は、報告書と請求書の束を持って、女王陛下に面会しないといけないんだぞ…。」
シェインの「誰でも良いから、変わってくれ」と言いたげな口調に、ルナは笑みを浮かべて「でしたら…」と、悪戯好きな顔になって意見を述べた。
「トウヤを、貴方の代わりに行かせたらどうですか?
大体、請求書の2人のうち1人は、トウヤの妻ですからね。」
最初からシェインに言う事を計算していたかのようなルナを見て、シェインは仕切りに頷きながら、ルナに請求書を突き出す。
「是非とも、そうしてくれ。
アイツ等なら、今頃は食堂にいるだろう。」
そんなシェインから請求書の束を受け取り、ルナはにこやかにシェインの部屋から出て行くのだった…。
場所は変わり、食堂で…。
今日も、全身から煙を上げたまま机に突っ伏している2人がいた。
1人は黒髪黒目で、やや幼い顔立ちをしている男、トウヤだ。
もう1人は、赤い髪をオールバックにした、肩幅の広い老け顔の男、クラシルである。
そんな2人の対面には、赤い髪をポニーテールにして、腕組みしたまま、幾分つり上がった赤い目で2人を見ている女性、エリシアがいる。
そんな3人から少し離れた場所には、肩まである茶髪に大きな茶色い目をした少女、棗が1人で座っていて、面白そうに3人を見ている。
「で? 今日は何でエリシアに攻撃されたんだ?」
こちらへ冷めた視線を投げるエリシアを無視して、トウヤがクラシルに問い掛けると、クラシルは悲しげな声で呟いた。
「そんな気分だったらしい…」
何とも悲しい理由で攻撃されたクラシルの肩に、トウヤは無言で手を乗せた。
最初のコメントを投稿しよう!