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食堂のマスコット。
メイド服を着た猫耳少女ことシアは、その小さな体で俊敏に動き、カップにコーヒーを注いでは配っていく。
「エリシア様!…クラシル様!…神子様!…」
明るく、楽しげに配膳していくシアの姿は、見る者の心を和ませる。
とは言っても、この3人に配膳する時だけだ。
その後は…、
「エロ助!
いつまで神子様を待たせるですか!
さっさと座るですよ!
ギョロ目!
ギョロ目も、コーヒー飲みたいですか?」
先程までの明るい表情はそのままに…、悪口とも取れる呼び方で、シアがトウヤと棗に呼び掛ける。
そんなシアに向かって、トウヤはやれやれと言いたげに首を振り、棗は「誰がギョロ目だ~」と相も変わらず言い返しながら、シアからコーヒーを受け取っていた。
トウヤは、ミリィに粉々にされた椅子の代わりに、近くにあった椅子を、耳障りな音を立てながら引きずってクラシルの隣に座り、ミリィはエリシアの隣に腰掛けた。
今、トウヤの目の前にはミリィが作った朝食が置かれている。
今日の朝食は、焼きそばだ。
「では…いただきます!」
箸を持ちながら、ミリィに向かって両手を合わせたトウヤは、麺を口に運ぶ。
「……どう?
美味しい?」
自信があるのか、トウヤの前に座るミリィが、期待に目を輝かせながら尋ねてくる。
「うん…俺には、ちょっと塩辛いけど、美味いよ!」
そのトウヤの答えに、エリシアやクラシルだけでなく、周りにいた棗やシアまでもが驚いたように声をもらす。
ミリィは、そんな周りの反応など気にしていないらしく、少し不満げな顔をしている。
「まだ塩辛く感じるの?
薄味にしたつもりなのに…」
どうやら「美味い」と言ったトウヤの言葉より、その前の「ちょっと塩辛い」と言った言葉の方が、ミリィには重要らしい。
トウヤは、嬉しそうに笑いながらミリィに言った。
「そんな、不満そうな顔しないでくれよ。
これは俺の好みの問題だし、ミリィの料理は十分美味いよ。
結婚したばかりの時は、炭だった料理が、今は美味い料理を作れるようになったんだから、それだけでも俺は『凄い事だ』って思うよ。」
嬉しそうにそう語るトウヤに、ミリィ以外の仲間達が大きく肯いている。
特に棗などは、口元に手を当ててニヤニヤ笑いながら「あの炭になった料理はね~」と、ミリィをからかってくる。
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