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「炭って言わないでよ!
あの時は…アレよ。
火を見たら、何て言うか…勢いを強くしたくなる欲求が…こう…ジワジワと…」
何気に危険な事を真面目な顔で言うミリィに、棗は「物騒だよね~」と言って、乾いた笑い声をあげる。
「棗!あんまり、ミリィちゃんをからかうもんじゃ無いよ。」
そんなトウヤ達の元へ、他の仲間達の料理を大きなトレーに抱えて、ずんぐりとした体型のおばちゃんがトウヤ達の元へと歩いてきた。
食堂のおばちゃんことタエ婆ちゃんは、人懐っこい笑みを浮かべて、みんなの前に料理を並べていく。
「だいたい、トウヤも分かって無いねぇ。
ミリィちゃんは、アンタに食べて欲しいから、料理を作り始めたんだよ?
アンタの口に合わないなら、意味が無いんだよ。」
ミリィの気持ちを、代弁するように話すタエ婆ちゃん。
そんなタエ婆ちゃんの言葉を聞いて、ミリィは耳まで赤くしてうつむいてしまう。
一方のトウヤも「それは…何と言うか…」と歯切れ悪く呟き、恥ずかしいのを誤魔化すように焼きそばを次々と口へ運んでいった。
「結婚して一年過ぎたのに、未だに初々しいわね。」
エリシアが、頬杖を付きながらトウヤとミリィを交互に見て言うと、棗が2人を「ラブラブだね~!」と笑顔で茶化す。
そんな和やかな雰囲気の中、ルナが満面の笑みを浮かべて、食堂へ入ってきた。
「ルナ~!」
食堂に入ってきたルナへ、棗がいち早く呼び掛ける。
ルナは、棗に手を振りながらトウヤ達に近付いてくる。
「皆さんが揃っていてくれて、良かったですわ。
探す手間が省けました。」
満面過ぎる笑顔のルナを見て、トウヤだけが嫌そうにルナを迎える。
そんなトウヤの顔を見て、益々笑みを深めたルナは、「朝から焼きそばですか?」と言いながら、トウヤの目の前に、持ってきた報告書を先に渡した。
途端に真剣な面持ちになったトウヤは、焼きそばを物凄いスピードで口へ運んでいく。
「ふぅ…ごちそうさま!
美味かったよ!」
あっという間に完食したトウヤは、せっかくの自信作だった焼きそばを、急いで食べたことにムスッとしているミリィに向かって両手を合わせ、報告書に目を通し始めた。
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