21583人が本棚に入れています
本棚に追加
/704ページ
トウヤの言葉に、全員が力強く頷き、そんな雰囲気の中で、ルナは“もう一つの書類の束”をトウヤに差し出した。
「フフフフフフ…貴方なら、きっとそう言ってくれると思いましたわ。
トウヤなら、こんなモノも大丈夫でしょう?
期待していますわよ!」
食堂に入ってきた時の、満面の笑みに戻ったルナが差し出したもの…。
それを受け取ったトウヤは、その“請求書の束”を手に、プルプルと震え出す。
トウヤの様子から、何か良からぬ事になると察したミリィは、トウヤの手に添えていた手をサッと放して、あさっての方を向く。
「ミリィ…エリシア…」
不穏な空気をまとい、トウヤが手にした請求書の束を握り締めながら、決してトウヤと目を合わそうとしない母娘を睨み付ける。
「教えてくれ。
何をどうやったら、こんなに物を壊せるんだ?」
目一杯に声を低くしたトウヤが問い掛けると、隣に座っていたクラシルが憐れむようにトウヤを見つめる。
シアやタエ婆ちゃんは、既に我関せずと言いたげに料理を食べ始めているし、棗やルナは面白そうにトウヤを見ている。
一方のミリィとエリシアは、決して目を合わそうとしないままで、エリシアが汗を流しているミリィの脇を、分からないように肘で突ついていた。
「エリシア…ミリィの脇を突っついて何してるんだ?
この請求書の、大半はお前だよな?」
ミリィの脇を突いていたエリシアを見逃さなかったトウヤが、エリシアに問い掛けると、エリシアは逆に開き直ったらしい。
堂々とミリィの肩に手を乗せ、ミリィに微笑みかける。
すると、ミリィはダラダラと冷や汗をかいて、トウヤに訴えかけるような視線を向けた。
「エリシア…お前、自分の娘を脅すなよ。」
ミリィが不憫に思えたらしく、トウヤが低い声でエリシアをたしなめると、エリシアは小さく舌打ちして、トウヤに向かって言った。
「分かったわよ。
悪かったわよ!」
純粋に謝るのが大嫌いなエリシアが、トウヤに向かって謝る。
それを見て、ミリィも同じようにトウヤへ「ごめんなさい」と謝るが、そこにルナがしつこく追い討ちをかける。
「ちなみに、その請求書と報告書を持って、明日は女王陛下に面会して下さいね。」
ルナの言葉に、トウヤは何も言えずに机に再び突っ伏してしまうのだった。
最初のコメントを投稿しよう!