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「オイラは、タワナ国で何かを発見したんじゃないかって思うんだけど…、母ちゃんはどう思う?」
目を閉じているユエに、アレンが紙を指差しながら尋ねると、ユエは目を閉じたままアレンをたしなめた。
「アレン。
何事も、落ち着いて良く考えなさいといつも言っているでしょう?
『タワナ国で』と書かれた部分しか分からない以上、安易に物事を決めつけてはいけません。
この場合、いくつかの予測を立てて、調べていくべきです。」
ユエは、ここでようやく目を開けて、全員に向かって話し掛けた。
「この僅かな文面から想像すると…タワナ国に、死んだ方の知り合いが待っていたと考えるのが妥当でしょう。
他には、アレンの言うように、タワナ国内で“何か”をしようとしているパターンですね。」
「何かって、何だろ~?」
ユエの話に、棗がすかさず問い掛けると、ユエは眉をひそめて首を横に振った。
「今の現状では分かりません。
分かっている事は、タワナ国内に来ているシルメリアの難民達が、何かをした…もしくは…しているという事です。
そして、ここから先は想像ですが、その“何か”を知った難民を、シルメリアの暗殺部隊が殺しているのでしょう。」
「『殺している』…ですか?
という事は、あの白装束のバカは、他にも誰かを殺しているですか?」
ユエの話し方が気になったシアが、ユエに問い掛けると、ユエは重々しく頷いた。
「私の元には、いくつか同じ様な報告が届いています。
おそらく、その暗殺部隊が動いているのでしょう。」
連続して起こっている可能性まで出てきたという事に、棗やシアは「やっぱり」と言いながら頷き、アレンだけが「そうなんだ!」と驚きの声をあげる。
1人だけ理解が悪いアレンに白けた目を向けながら、棗はユエに今後の話を切りだした。
「これから、どう動くべきなのかな~?」
森羅から言われた、「シルメリアの難民を助けろ」という任務がある。
更に、魔力を全て抜かれて死亡するという事件もある。
棗には、どれを優先すれば良いのか分からないのだろう。
すると、ユエはまるで棗がそう言ってくると分かっていたかのように、微笑みを浮かべながら言った。
「先ずは、シルメリア難民達の現状を把握する事から始めましょう。
シルメリアの暗殺部隊が動いているのは間違いない事実ですから、今は全体的な事を理解するべきです。」
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